中東呼吸器症候群(MERS)について

 

①中東呼吸器症候群(MERS)とはどんな病気ですか?

中東呼吸器症候群 (Middle East respiratory syndrome, MERS) の病原体はMERSコロナウイルス(マーズコロナウイルス、Middle East respiratory syndrome coronavirus, MERS-CoV)です。SARSコロナウイルスに似た新型コロナウイルス(ベータ型)で、2012年にロンドンで確認されました。中東地域の感染国は、サウジアラビア、UAE、カタール、オーマン、ヨルダン、クウェート、イエメン、レバノン、イランですが、感染拡大中で、2015年5月30日現在の感染地域は中国、香港、韓国に広がっております。肺炎(異型であるので診断に注意が必要)を主症状としており、死亡率が40-50%前後と非常に高いことが特徴です。

 

②MERSの特徴は?

感染してから発症するまでの潜伏期間は、2~14日(中央値は5日程度)です。もともと、動物の体内にいたウイルスが人間に感染するようになったとみられておりますが、詳しい感染経路は分かっていません。ヒトコブラクダの体内からMERSコロナウイルスが見つかっていることから、ヒトコブラクダが感染源の1つと考えられています。

MERSに感染すると、38度以上の発熱やせき、息切れなどの症状が現れ、肺炎を起こして急性呼吸窮迫症候群ARDSをきたします。下痢などの消化器症状の他に、多臓器不全(特に腎不全)や敗血性ショックを伴う場合もあります。糖尿病や心臓病など慢性的な病気を抱えている人や高齢者は重症化しやすいので注意が必要です。現時点ではワクチンや確立した治療法が見つかっていませんので、症状に合わせた対症療法がおこなわれます。消毒は消毒用エタノール、イソプロパノール、次亜塩素酸ナトリウムが推奨されています。

 

③お願い

外来では呼吸器衛生、咳エチケットを含む標準予防策を徹底します。飛沫感染予防策を行うことが最重要です。手指衛生を確実に行うとともにN95マスク、手袋、フェイスシールドやゴーグル、ガウンを着用することが望まれます。感染を疑う場合には直ちに届け出の義務があり、感染症指定医療機関への搬送を行います。