百日咳( whooping cough, Pertussis )について

①百日咳とは何ですか?

 

グラム陰性桿菌の百日咳菌(Bordetella pertussis)による呼吸器感染症です。特有の痙攣性の咳発作を特徴とします。地域的な流行が3~5年毎に起きますが、1年を通じて発生が見られます。春が多い傾向があります。WHOの発表では、世界の患者数は年間2,000 - 4,000 万人で、日本での年間罹患数の推計値は2000年28,000人、2001年15,000人です。死亡率は1~2%です。感染者の6割程度は5歳未満で、2歳未満の子供の場合は重症化しやすく、6ヶ月未満の小児の死亡率が高いのが特徴です。

 

 

②百日咳の特徴について教えてください。

 

この病気は回復までに約3ヶ月以上を要することから百日咳と呼ばれます。潜伏期間1 - 2週の後に発症します。初期は軽い風邪症候群のような症状のカタル期(約2週間持続)、次に重い咳の発作が起こる痙咳期(約2 - 3週間持続)、最後に咳は軽くなりますが、いつまでも咳が止まらない状況が続く回復期(約2 – 3か月間以上持続)の3段階で病気は進みます。

 百日咳の咳は、大変特徴的で気管支が痙攣するような咳です。まず、短い間隔で咳が連続的に出ます(スタッカート)、続いて、急に息を吸い込んで、笛の音のような音が聞こえます(フーピング)。喘息発作では、息を吐く時にヒューという呼吸音が聞こえますが、百日咳では、息を吸い込みながら、ヒューという呼吸音が聞こえます。このような咳嗽発作を繰り返すことをレプリーゼと言います。咳発作(発作性痙攣性咳嗽)は夜間に起こりやすいのが特徴です。発作時には嘔吐、チアノーゼ、無呼吸、顔面紅潮・眼瞼浮腫(百日咳顔貌)、結膜充血の症状が見られ、尿失禁、肋骨骨折、失神も見られます。発作による体力消耗は激しく、不眠や脱水、栄養不良等が著しい場合は入院治療が必要となります。中耳炎を併発することも多いです。

 

 

③百日咳の診断と治療について教えてください

診断は百日咳毒素(PT)に対する抗体(PT抗体)を調べて行います。採血してPT抗体が上昇していれば百日咳と診断できるわけですが、1回だけの検査「単血清」で行うか、「対血清(ペア血清)」で行うか、あるいはカタル期、痙咳期、回復期のどの時期に検査を行うかなどによって診断は難しいと言われます。治療はマクロライド系抗生物質が有効です。カタル期に開始すれば痙咳期に進行せず、軽快させることができますが、カタル期に百日咳の診断をつけることは難しいので、痙咳期からの治療になることがほとんどです。この時期から飲んでも発作性痙攣性咳嗽は、治まりませんが、除菌効果(百日咳菌を体外に排出するはたらき)は、期待できます。内服期間は2週間くらいです。百日咳の免疫は、一度罹っても2~5年で下がってしまいます。したがって繰り返し感染する可能性があります。ワクチンで予防することが最善と考えられます。感染してしまった場合は特有の咳が消失するまでは学校は出席停止となります。