デング熱、デング出血熱 ( Dengue fever, Dengue hemorrhagic fever )

①デング熱とは何ですか?
デング熱はデングウイルスが感染し症状が現れた患者さんの大多数を占める病気です。潜伏期間は2~14 日(多くは3~7日)です。突然の高熱で発症します。頭痛、眼の奥の痛み、腰痛、筋肉痛、骨痛が主な症状として現れ、さらに食欲不振、腹痛、吐き気、嘔吐、脱力感、全身倦怠感も現れることがあります。全身のリンパ節の腫れもみられます。発熱のパターンは二峰性になることが多いようです。発症後、3 ~4 日後より胸部・体幹から始まる発疹が出現し、四肢、顔面へ広がります。これらの症状は約1週間で消え、通常は後遺症を残すことなく回復します。
デング出血熱はデングウイルスに感染したヒトのうち、最初はデング熱とほぼ同様に発症し経過しますが、熱が平熱にもどるころに血液中の血漿が血管からもれ出したり、出血の症状が現れたりすることがあります。この病気はデング出血熱と呼ばれ、適切な治療を行わないと死亡することがあります。このような症状が出現するのは5%未満と言われております。

②デング熱の治療法について教えてください。
デングウイルスに対する治療薬はなく、対症療法が中心です。デング熱、デング出血熱の発熱に対しては、出血傾向を増悪させる可能性があるため、アスピリンを使用してはいけないことになっています。デング出血熱に対しては、補液が主な治療法です。
ウイルスに感染した患者さんを蚊が吸血すると、蚊の体内でウイルスが増殖し、その蚊が他の人を吸血することでウイルスが感染します(蚊媒介性)。主たる媒介蚊はネッタイシマカ(日本には常在していません)です。ただし、日本のほとんどの地域(秋田県および岩手県以南)でみられるヒトスジシマカも媒介できます。ヒトスジシマカは、日中、屋外での活動性が高く、活動範囲は50~100メートル程度です。国内の活動時期は概ね5月中旬~10月下旬頃までです。ヒトからヒトに直接感染するような病気ではありません。また、感染しても発症しないことも多くみられ、約50~80%が不顕性感染という報告もあります。

③予防法はありますか?
予防に関しては、日中に蚊に刺されない工夫が重要です。具体的には、長袖・長ズボンの着用、昆虫忌避剤の使用などを心がけましょう。デングウイルス感染症がみられるのは、媒介する蚊の存在する熱帯・亜熱帯地域、特に東南アジア、南アジア、中南米、カリブ海諸国ですが、アフリカ・オーストラリア・中国・台湾においても発生しています。全世界では年間約1 億人がデング熱を発症し、約25 万人がデング出血熱を発症すると推定されています。海外渡航で感染し国内で発症する例(輸入症例)が増加しつつあり、2014年の夏季には輸入症例により持ち込まれたと考えられるウイルスにより150例以上の国内流行が発生しました。
全数報告対象(4類感染症)であり、診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出なければなりません。