慢性中耳炎について

①慢性中耳炎について教えてください。
耳には急性中耳炎がひどくなると、鼓膜に穴があき、中から自然に膿を出して炎症を治そうとするはたらきがあります。この時にあいた穴は通常は自然に閉じますが、中耳炎を繰り返したり、治り方が完全でないと穴が閉じなくなり慢性中耳炎になります。急性中耳炎をしっかり治すことが、慢性中耳炎の予防になります。
慢性中耳炎の症状は、鼓膜にできた穴(穿孔)からバイ菌が入り、膿が出てきたりします。これを耳だれ(耳漏じろう)と呼びます。穿孔があるために伝音難聴といって、音が伝わりにくい状態になります。鼓膜穿孔が小さい時の難聴は軽度ですが、鼓膜穿孔が大きくなり感染が続くと、その影響が内耳にも及んで感音難聴といって神経がだめになってしまったり、耳鳴りやめまいなどを引き起こしてしまう場合があります。

②どんな治療を行いますか?
(1)保存的治療
耳漏をとめて、感染をできるかぎり軽くするのが目的です。外耳道、中耳腔の清掃、耳洗、耳浴などを行います。急性増悪の時には抗生剤を内服します。点耳液のなかには耳毒性をもつアミノ配糖体系抗生剤を含むものがあるので注意が必要です。耳漏が一時的にとまってもかぜをひいたり、体調を崩すとまた再発することが多いです。
(2)外科的治療
手術は耳漏をとめて感染を押さえ、聞こえを少しでも良くすること、いろいろな合併症を予防することが目的です。手術には、大きく分けて2つの方法があります。鼓膜形成術といって、鼓膜の穴の開いた部分をふさぐ手術と鼓室形成術といって、炎症のある部分を取り除いて、聞こえが少しでも良くなるように再建する手術です。

③治療しないで放置するとどうなりますか?
耳の中には聴覚神経、平衡神経、顔面神経、味覚神経などがあります。慢性中耳炎がひどくなるとこれらの神経に障害が出現します。聴覚神経の障害では難聴と耳鳴りが出現します。平衡神経の障害ではめまいが出現します。顔面神経の障害では顔面神経麻痺、味覚の神経の障害では味覚の低下などが起こります。また、耳の近くには脳や大きな血管がありますので、S状静脈洞血栓症、 硬膜外膿瘍、 髄膜炎、脳膿瘍などの合併症を起こすこともあります。