RSウイルスについて

①RSウイルスとはどんな病気ですか?

RSウイルス(respiratory syncytial virus)はパラミクソウイルス科に属するRNAウイルスの一種で、A型とB型の2つの型に分類されますが、重症化には差がありません。日本では、11月から1月にかけて冬期の流行が多く報告されます。乳幼児の肺炎の約50%、細気管支炎の50〜90%を占めるとの報告もあります。1歳までに50〜70%以上の新生児が罹患し、その1/3が下気道疾患を起こすと報告されており、3歳までにほぼ全ての小児が感染すると言われます。ウイルスは変異しやすいため何度でも、くり返し感染します。感染力および増殖力は強く、飛沫と接触感染の両方で感染し、発症前の潜伏期にも周囲の人に感染します。小児は症状が消えてから1〜3週間後も感染力を失わないため、保育園や学校、病院の入院病棟、老人ホーム、家庭内などでの集団感染を起こしやすいです。

どのような症状が特徴ですか?
潜伏期は4~6日で、鼻汁、咳、発熱などの上気道症状が現れます。3割程度の人はこのあと炎症が下気道まで波及して、気管支炎や細気管支炎を発症し、咳の増強、呼気性の喘鳴(ぜんめい)(ぜいぜいする)、多呼吸などが現れてきます。冬季に乳児が鼻汁、咳に引き続いてぜいぜいしてきたような場合には、その30〜40%がRSウイルス感染症によると考えられます。鼻汁材料を用いたRSウイルスの抗原検出キットが使用可能ですが、入院児のみが保険適応になります。
 重症化すると入院治療が必要となります。RSウイルス感染症では36週未満で生まれた早産児や慢性肺疾患のある子供、先天性心疾患をもつ子供は重症化しやすいとされます。通常は数日〜1週間で軽快します。

③どのような治療を行いますか?
対症療法が主体になり、発熱に対しては冷却とともに、アセトアミノフェン(カロナール)などの解熱薬を用います。喘鳴を伴う呼吸器症状に対しては鎮咳去痰薬や気管支拡張薬などを用います。脱水気味になると、喀痰が粘って吐き出すのが困難になるので、水分の補給に努めます。細菌感染の合併が疑われる場合は抗生剤を使用します。
 早産未熟児、慢性肺疾患児、さらに血行動態に異常がある先天性心疾患児に対して抗RSウイルス単クローン抗体(パリビズマブ〈シナジス〉)が予防的に投与される場合があります。