認知症予防で18〜65歳に最も気をつけたいのは難聴


2024年7月31日に『ランセット』誌に掲載された「認知症予防、介入、ケア:2024年報告書」は、認知症の予防とケアに関する重要な知見を提供しています。この報告書では、14の修正可能なリスク要因を特定し、これらに対処することで認知症の約45%を予防または遅延させる可能性があるとされています。

14の修正可能なリスク要因

以下の14の要因が、認知症のリスクを高めるとされています。

18歳まで

  • 教育の不足:初期の教育機会の不足が認知症のリスクを高める。

18~65歳

  • 難聴:聴力の低下が認知症のリスクを増加させる。
  • 高LDLコレステロール:中年期の高LDLコレステロール値が認知症のリスクを高める。
  • うつ病:中年期のうつ病が認知症のリスクを増加させる。
  • 外傷性脳損傷:頭部外傷の経験が認知症のリスクを高める。
  • 運動不足:身体的活動の不足が認知症のリスクを増加させる。
  • 糖尿病:糖尿病が認知症のリスクを高める。
  • 喫煙:喫煙が認知症のリスクを増加させる。
  • 高血圧:高血圧が認知症のリスクを高める。
  • 肥満:肥満が認知症のリスクを増加させる。
  • 過度のアルコール摂取:過度のアルコール摂取が認知症のリスクを高める。

65歳以上

  • 社会的孤立:社会的な孤立が認知症のリスクを増加させる。
  • 空気汚染:空気汚染が認知症のリスクを高める。
  • 視力の低下:視力の低下が認知症のリスクを増加させる。

対策と推奨事項

報告書では、以下の13の推奨事項が示されています。

  1. 教育の機会の提供:質の高い教育をすべての人に提供する。
  2. 難聴の早期発見と補聴器の使用:聴力の低下を早期に発見し、補聴器を使用する。
  3. 高LDLコレステロールの管理:中年期からの高LDLコレステロールの管理を徹底する。
  4. うつ病の早期治療:うつ病を早期に治療する。
  5. 頭部外傷の予防:スポーツや交通事故などでの頭部外傷を予防する。
  6. 身体的活動の促進:定期的な運動を奨励する。
  7. 糖尿病の管理:糖尿病の管理を徹底する。
  8. 禁煙の推進:禁煙を促進する。
  9. 高血圧の管理:高血圧の管理を徹底する。
  10. 適切な体重の維持:適切な体重を維持する。
  11. 適度なアルコール摂取:過度のアルコール摂取を避ける。
  12. 社会的つながりの維持:社会的なつながりを維持する。
  13. 環境の改善:空気汚染の軽減など、生活環境の改善を図る。

結論

この報告書は、認知症の予防とケアに関する重要な指針を提供しています。14の修正可能なリスク要因に対処することで、認知症の発症を遅らせたり、予防したりすることが可能であるとされています。個人の生活習慣の改善だけでなく、社会全体での取り組みが重要であると強調されています。

「18〜65歳」に最も気をつけたいのは、難聴と高LDLコレステロール(共に同7%)だとしている。委員会は20年にも同様の報告書を出しているが、高LDLコレステロール、いわゆる悪玉コレステロールは今回初めてリスク要因に加えられた。

難聴は人とのコミュニケーションを難しくし、社会からの孤立を招く可能性がある。難聴の人12万人以上を対象とした研究の結果、補聴器を使用している人は、使用していない人と比べて認知症リスクが17%低かったという。

難聴、悪玉コレステロールとも対策をとることでそれぞれ7%認知症を予防できるという。食生活に注意するほか、ヘッドホンで音声を聞く際に大音量にしないようにしたり、中耳炎などの病気を治療したり、補聴器をつけたりすることが重要である。

出典:Gill Livingston, Jonathan Huntley, Kathy Y Liu, et al.: Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet (London, England). 2024 Aug 10;404(10452);572-628. doi: 10.1016/S0140-6736(24)01296-0.