伝染性単核球症について
①伝染性単核球症の原因は何ですか?
伝染性単核球症(でんせんせいたんかくきゅうしょう、 Infectious mononucleosis)主にEBウイルス(エプスタイン・バール・ウイルス、Epstein‐Barr virus 、EBV)の初感染によって起こる急性感染症です。口移しやディープキス等による唾液感染が原因といわれます。アメリカでは幼児期の感染率は20%で、多くは思春期、青年期で感染するため「キス病」とも言われます。日本では2~3歳までの感染が70%を占め、 20代では90%以上がこのウイルスの抗体を持つといわれます。1889年にドイツ人医師のエミール・ファイファーによって初めて報告されましたので、欧州では「ファイファー病」として知られております。
感染する年齢によって症状の現れ方が異なり、乳幼児期では病原菌に感染しても症状が現れない不顕性(ふけんせい)感染が多く、思春期以降では感染者の約半数に症状が現れます。
②伝染性単核球症ではどのような症状がありますか?
伝染性単核球症は発熱、咽頭痛、リンパ節腫脹を三主徴とします。潜伏期間は30~40日と考えられています。1~2歳ぐらいの初感染では、発熱と口蓋扁桃の膿栓(白苔)を伴った腫脹と発赤が見られる程度で、2~3日で自然軽快してしまうと考えられます。
年長児から青年期、あるいはそれ以上の年齢で初感染した場合は発熱、全身倦怠感のほか、口蓋扁桃の発赤、腫脹、偽膜形成を認め、口蓋には出血斑を認めることもあります。リンパ節の腫脹は頚部が主ですが、1~2週頃をピークとして全身に認められます。また、肝脾腫がみられ、発疹を伴うこともあります。通常は約4~6週間で症状は自然によくなりますが、まれに数ヶ月以上症状が持続し、慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)となるケースもあります。
③伝染性単核球症にはどのような検査を行いますか?
血液検査ではリンパ球の増加、異型リンパ球の出現が認められることがあります。また肝脾腫を伴うとトランスアミナーゼ(AST, ALT)が上昇します。抗EBNA抗体抗、VCA抗体、抗EA抗体などの抗体価を測定して、初感染なのか既感染なのかを判断します。
EBウイルスによる伝染性単核球症には特異的な治療法はなく、対症療法が中心となります。肝脾腫が強い場合は、腹部への衝撃により脾破裂が起こった症例もありますので、安静が必要です。経口摂取が出来なくなった場合には、入院が必要になります。抗菌薬は伝染性単核球症それ自体には無効で、発疹を誘発する可能性がありますので、ペニシリン系抗生物質のみならず、セフェム系抗生物質の投与も控えるべきといわれております。この病気に特別な治療法はなく、安静と対症療法が中心となります。