粘液嚢胞、がま腫について
①粘液嚢胞について教えてください。
口の中には大唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)と、唇や頬、舌の粘膜の下に1~2mmくらいの大きさの小唾液腺という組織が多数あり、唾液を分泌しております。小唾液腺から出る管が傷ついたり、詰まったり、もれたりして、唾液が正常に分泌されずに粘膜の下に溜まってしまったものが粘液嚢胞です。物を食べているときなどに誤って唇や頬の内側などを噛んでしまうと粘膜を傷つけてしまい、唾液を出す管が詰まってしまい粘液嚢胞になると考えられています。また下唇を噛む癖も粘膜を傷つける原因となりますので注意が必要です。
年齢的には10歳未満から30歳代までに多く見られ50歳以後になると発症例は少ないようです。発生部位は下口唇粘膜(口唇嚢胞、口唇チステ)や頬粘膜にできるものが多く、舌尖部下面にできたものはBlandinNuhn(ブランディンヌーン)嚢胞、口底部に発生し舌下腺に関連するものはがま腫と呼ばれます。粘液嚢胞は浅いものであれば、直径5~15mm程度の半球状で柔らかく、やや青紫色の腫瘤です。誤咬を繰り返して表面が白く瘢痕化しているものもあります。噛むなどして潰してしまった場合、嚢胞が破れて中から粘り気のある唾液が出てきます。中身がなくなるので、一旦はしぼんで小さくなりますが、数日で再度唾液が溜まると再び嚢胞が大きくなります。この場合は手術での摘出をお勧め致します。
②がま腫について教えてください
がま腫は舌下腺の損傷によってできる粘液嚢胞です。顎下型がま腫の場合は嚢胞がかなり大きくならないと皮膚の膨らみが分からず、顎舌骨筋の前方または後方、まれに筋肉の隙間から嚢胞がでてくることではじめて外見的に分かるようになる場合があります。ガマ腫は女性に多く、頻度は男性の3倍ほどと言われております。
③がま腫の治療法について教えてください。
通常はまず開窓療法という嚢胞を切開して唾液を外に出す治療を行います。しかし再発することが多いため、何度も再発を繰り返す場合には舌下腺をガマ腫ごと摘出する手術が行われます。
手術を行わない方法としてはOK-432(ピシバニール、A群溶血性連鎖球菌の弱毒の自然変異株(Su株)をペニシリンで処理した製剤)という薬をガマ腫内に注入する方法があります。嚢胞の内容液を注射器で吸引した後に生理食塩水で希釈したOK-432(0.1KE/ml濃度)を吸引量と同じ量を注入します。(嚢胞性疾患の治療に用いる場合は、0.5KEから2KEの間、多くは1KE以下を投与します。)この方法は注射してから治るまで時間がかかります。注射すると局所に痛みや発熱が認められますが、普通は2日ほどで消失します。1~2週間程、腫れが強い状態が続いた後に徐々に縮小し4~8週ぐらいで腫れは消失してきます。多くの場合は2回以内の注入で消失ないし縮小固定しますが、数回の注入が必要な場合もあります。がま腫、舌嚢胞、リンパ管腫では90%以上、耳血腫、正中頸嚢胞では80%以上の有効率という報告もありますが、類皮嚢胞には効果がなく摘出手術が必要と言われます。OK-432にはペニシリンが含まれますので、ペニシリンアレルギーのある場合は本治療を行うことは出来ません。また、この治療法では一時的に腫れが強 くなりますので、気道の近くの場合は呼吸困難などが起こる可能性もあります。
※当院ではがま腫の治療は行っておりません。