ヘルパンギーナ(Herpangina )について

①ヘルパンギーナとは何ですか?
ヘルパンギーナは、発熱と口腔粘膜にあらわれる水疱性発疹を特徴として、毎年5 月頃より増加し始め、6~7月にかけてピーク を形成し、9~10月にかけてほとんど見られなくなる小児の急性ウイルス性咽頭炎です。いわゆる夏かぜの代表的疾患です。
原因となるウイルスはエンテロウイルス属で、流行性のものは特にA群コクサッキーウイルスの感染によるものと言われます。患者さんの年齢は4歳以下がほとんどで、1歳代がもっとも多いです。

②ヘルパンギーナの特徴について教えてください。
2~4 日の潜伏期を経過し、突然の発熱(38度以上、時には39度~40度近い高熱を発症するケースもあります)に続いて咽頭粘膜の発赤が顕著となり、口腔内、主として軟口蓋から口蓋弓にかけての部位に直径1~2mm 、場合により大きいものでは5mmほどの紅暈で囲まれた小水疱が出現します。小水疱はやがて破れ、浅い潰瘍を形成し、疼痛を伴います。発熱については2 ~4 日間程度で解熱し、それにやや遅れて粘膜疹も消失します。発熱時に熱性痙攣を伴うことや、口腔内の疼痛のため不機嫌、拒食、哺乳障害、それによる脱水症などを呈することがありますが、ほとんどは予後良好です。
ヘルパンギーナは原因となるウイルスが複数ありますので、何度もヘルパンギーナを発症する可能性があります。大人がヘルパンギーナに感染するケースでは、子供からの2次感染によるケースが多いです。大人は免疫力も体力も子供と比較すると強い傾向にありますが、大人が感染した場合は39度を超える高熱など、やや重い症状が続く事もあります。

③ヘルパンギーナの治療について教えてください。
ヘルパンギーナはウイルス感染症ですが、現在のところ予防となる抗ウイルス剤やワクチンはありません。ヘルパンギーナの治療に関しては対症療法が基本となります。発熱や頭痛などに対してはアセトアミノフェンなどを用いることもあります。時には脱水に対する治療が必要なこともあります。発熱に関しては、2~3日程度で徐々に熱が下がりますが、熱が長期間にわたって下がらない場合は髄膜炎等の合併症を発症している可能性もあります。髄膜炎や心筋炎の合併例では入院治療が必要となります。
ヘルパンギーナの原因となるエンテロウイルスは回復期に入っても2週間~3週間以上の長期に渡り便からウイルスが検出されるケースが多いことが確認されております。症状が治まり、見た目は元気な状態になったとしても糞口感染(便に触れた手から体内に侵入する感染)による感染の可能性がなくなったわけではないので、感染者との密接な接触は避け、流行時にはうがいや手指の消毒を励行することなどが大切です。