トリクロール酢酸下甲介化学剤手術について
①鼻アレルギーに対するトリクロール酢酸塗付療法について教えてください。
アレルギー性鼻炎の治療ガイドラインでは、花粉、ダニ、ハウスダストなどの抗原の回避(マスクの着用や室内の清掃)、薬物療法(内服薬や点鼻薬)が行われます。しかし、鼻閉に対しては内服や吸入治療を中心とする保存的療法では十分な効果が得られない場合があります。薬物療法のみで症状を抑えることができない重症例に対しては手術療法がおこなわれます。手術療法として下鼻甲介粘膜切除術(効果は高く長持ちですが入院が必要です)、レーザー手術(効果は2―3年です。入院は必要ありません)、電気凝固療法、化学薬品を用いたトリクロール酢酸塗付療法(効果は1―2年です。入院は必要ありません)などがあります。トリクロール酢酸下甲介化学剤手術は肥厚性鼻炎の治療としてドイツで行われておりましたが、アレルギー性鼻炎の治療としては1988年に八尾先生らによって初めて報告されました。
②トリクロール酢酸塗付療法の流れを教えてください。
この方法は、鼻腔粘膜をアドレナリン加4%キシロカインで麻酔を行い、80%トリクロール酢酸を綿棒を用いて下甲介に塗布します。施術時間は麻酔を含めて30分程度です。術中は我慢できない痛みはありませんが、麻酔が切れてくると痛みを感じる方もいますので、痛み止めを処方することもあります。術後は痛みや不快感のないことを確認してから帰宅が可能で、手術翌日からは就労も可能です。手術後は鼻粘膜が腫れるため痛みを伴い、鼻づまりがおきます。当日は、鼻を強くかんだり、すすったりしてはいけませんが、翌日からは、普通に鼻をかめます。その後、1~2週間は鼻汁とかさぶた状のものがでてきて、鼻づまりは逆に強くなりますが、次第に収まり、違和感なく過せるようになります。治療後しばらくの間は通院治療が必要となります。
③トリクロール酢酸塗付療法の効果や適応について教えてください。
この治療の効果はレーザーと同等といわれております。レーザーを用いた場合との違いは、レーザーで灼く場合は鼻中隔彎曲症の方には手術を行えない事がありますが、トリクロール酢酸の場合は、多少の鼻中隔彎曲症があっても手術は可能な場合があります。効果の持続期間には個人差がありますが、概ね1―2年程度と言われております。術後の経過により、再手術が必要になることがあります。また効果が不十分なときは薬物療法を並行して行うこともありますが、術前に比べると薬の量を減らすことができます。症状の改善度は鼻づまりに対して約70%、鼻水に対して約60%、くしゃみに対しては約50%といわれております。
スギ花粉症の方はアレルギー反応がひどくなるシーズン前に治療を終了しておいた方が、治療効果が良いという事が知られております。すでにアレルギー症状が起きていると、鼻水で薬がうまくぬれないため、出来れば12月までに手術を受けることをお勧めいたします。スギ花粉の飛散中の施術はお勧めしません。この治療によってアレルギー体質が変わるものではありませんので 、症状が全く無くなるものではありません。
動かなければ、小学校高学年くらいのお子さんから行うことができます。入院の必要がない事 、副作用が少ない事などがメリットです。