耳管狭窄症と耳管開放症について

 

①耳管狭窄症、耳管開放症はどんな病気ですか?

 

耳管は中耳腔と上咽頭(鼻の奥)をつなぐ約3.5㎝の管です。外部気圧との圧力バランスをとる働きがあります。この管は普段は閉じているのですが、あくびや物を飲み込む時に開き、中耳が換気され外界と圧が平衡状態になります。皆さんも山登りをしたり、エレベーターに乗った時などに、耳が急に詰まってしまった経験はあるかと思います。耳管の働きが正常であれば、何回かツバキを飲み込んだり、口を動かしたり、あくびをすると元の状態にもどります。しかし、何らかの原因で、耳管の働きが悪くなってしまうと、元の状態に戻らなくなります。耳がふさがったままの状態、あるいは耳が詰まったままの状態を耳管狭窄症と言います。ひどくなると、聞こえが悪くなるだけでなく、耳が痛くなってしまったり、中耳炎を起こしてしまう場合もあります。

耳管の調節機構がはたらかず、常に耳管が開いた状態になったものが耳管開放症です。自分の声が響いて聞こえたり、ゴーゴーという自分の呼吸する音が響いたりします。

 

②耳管狭窄症、耳管開放症はどうして起こるの?

 

耳管の働きが、原因もなく急に悪くなってしまう場合もありますが、上気道炎や副鼻腔炎に伴う後鼻漏などが原因で耳管周囲が炎症を起こし、粘膜がむくんでしまい、ふさがってしまう事が多いです。上咽頭にある耳管の入り口がアデノイドや腫瘍などによって物理的にふさがれてしまい、耳管狭窄を起こす場合もあります。鼻をかまないで、すすってしまう癖のあるお子さんは上咽頭が陰圧になってしまい、耳管狭窄症や滲出性中耳炎を起こすことが多いです。中耳炎などの炎症がある場合も耳管狭窄はおこります。中耳腔の換気がうまくいかなくなると、中耳腔が陰圧になってしまい、耳管狭窄がおこります。

耳管開放症は女性にやや多いと言われ、急激な体重減少のあとなどに起こることが多いようです。最近増加傾向にあるといわれます。

③どのような治療をしますか?

 

原因となる病気があれば、その病気を治療することが必要になります。アデノイドの手術を行ったり、鼓膜にチューブを留置する場合もあります。耳管狭窄の症状に対しては、自分で耳抜きが上手にできれば、自然に改善する場合もあります。狭窄の症状の強さや炎症の程度によって、抗生物質や、消炎剤を使います。可能であれば耳管通気を行います。小さいお子さんはポリッツエル球というゴム球を使って、通気を行います。大人の方はカテーテルという管を使って通気を行います。何度か耳管通気を、行うことによって症状が改善する場合もありますが、もともと耳が詰まりやすい方は、通気療法を行っても、すぐにまた塞がってしまうことがありますので、根気強く治療を続けます。耳管狭窄症も放っておくと大変なことになってしまう場合がありますので、耳鼻科での治療をお勧めします。

耳管開放症の治療は、軽症では生活指導や安定剤などの投与で様子をみますが、効果がなければ、耳管開口部に薬液を噴霧して炎症を起こさせ、わざと耳管を狭窄させる治療が行われます。しかし、この治療効果の持続時間は短いのが欠点です。時に鼓膜チューブ留置術などにより自覚症状が改善することがあります。治りにくい場合には、耳管周囲への脂肪やコラーゲンの注入、ピンの挿入が行われることもあります。