睡眠時無呼吸症候群の治療について
①睡眠時無呼吸症候群とはどんな病気ですか?
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome)は、眠っている間に呼吸が止まる病気です。Sleep Apnea Syndromeの頭文字をとって、SAS(サス)とも言われます。
医学的には、10秒以上の気流停止(気道の空気の流れが止まった状態)を無呼吸とし、無呼吸が一晩(7時間の睡眠中)に30回以上、若しくは1時間あたり5回以上あれば、睡眠時無呼吸です。
米国睡眠医学会は無呼吸・低呼吸指数(apnea hypopnea index; AHI、無呼吸とは口、鼻の気流が10秒以上停止する状態。低呼吸とは10秒以上換気量が50%以上低下する状態。無呼吸・低呼吸指数 とは1時間あたりの無呼吸と低呼吸を合わせたものです。) が5以上かつ日中の過眠などの症候を伴うときを睡眠時無呼吸症候群とする定義を提唱しております。
発症原因から閉塞性睡眠時無呼吸症候群、中枢性睡眠時無呼吸症候群、混合性睡眠時無呼吸症候群に分類されます。ほとんどは閉塞型で中枢型は少ないといわれます。
入院して睡眠ポリソムノグラフィ検査を行い診断します。携帯型の簡便な装置(アプノモニター)で在宅検査を行なう場合もあります。
体重が急に増えてしまった場合などSASになる患者さんもおりますが、やせていても顎が小さい(小顎症)ため気道がふさがれやすく、SASになる患者さんもおります。扁桃肥大、アデノイド増殖症、舌が大きい(巨舌症)、鼻が曲がっている(鼻中隔彎曲症)などもSASの原因になります。
②SASの症状について教えてください
症状は就寝中の覚醒の短い反復とそれに伴う脳の不眠、昼間の耐えがたい眠気、抑うつ、頻回の中途覚醒、集中力の低下、睡眠時の呼吸の停止、大きないびき、夜間頻尿、起床時の頭痛、インポテンツ(女性の場合は月経不順)、のどが渇く、こむら返りなどです。
よくある深刻な問題は、自動車の運転中に強い眠気が発生して事故を起こしてしまうことです。突然死の原因になることもあります。
高血圧、心臓病、脳卒中、糖尿病などの生活習慣病の発症リスクが2~3倍になるという報告もあります。
③どのような治療がありますか?
1.スリープスプリント:マウスピースを用いて下顎を前進させた状態を固定して気道の狭窄を防ぎます。肥満体ではなく小顎症に由来するSASが主な対象となります。医科からの紹介により歯科・口腔外科で作成されます。
2.外科的治療(口蓋垂軟口蓋咽頭形成術など):口蓋垂、口蓋扁桃、軟口蓋の一部を切除して気道を広げます。小児の多くや成人の一部で、SASの原因がアデノイドや扁桃肥大などの場合は、摘出手術が有効な場合があります。
3.持続陽圧呼吸療法nasal CPAP(nasal continuous positive airway pressure、ネーザルシーパップ):装置よりチューブを経由して鼻につけたマスクに加圧された空気(陽圧の空気)を送り、その空気が舌根の周囲の軟部組織を拡張することで気道狭窄を防ぐ方法です。SASの程度によりますが、保険診療扱いとなります。装置をレンタルして使うシステムですので、症状の有無に関わらず1ヶ月に最低1回は診察が必要となります。