扁桃周囲膿瘍、扁桃周囲炎(Peritonsillar abscess、Peritonsillitis)

①扁桃周囲膿瘍、扁桃周囲炎とは何ですか?
急性扁桃炎に続発して口蓋扁桃の周囲に炎症が及ぶことで起こります。30代の男性に多く発症します。扁桃に生じた炎症が扁桃被膜外に波及すると扁桃周囲炎を生じ、さらに膿瘍を形成すると扁桃周囲膿瘍となります。
片側性の感染がほとんどであり,膿瘍の形成部位は扁桃と上咽頭収縮筋の間です。通常は複数の細菌が関与しますが、レンサ球菌およびブドウ球菌は最も頻度の高い好気性病原菌です。バクテロイデス属が主な嫌気性病原菌です。

②扁桃周囲膿瘍、扁桃周囲炎の特徴について教えてください。
激烈な咽頭痛が特徴です。通常は片側だけです。感染範囲が広がると耳への放散痛、開口障害が出現します。嚥下痛も高度で、唾液を飲むこともできなくなり、よだれをたらします。全身的には、高熱を伴い、経口摂取がほとんどできなくなります。全身倦怠感、脱水状態となります。      
診察すると口蓋扁桃とその周囲の粘膜が赤く強く腫脹して、口蓋扁桃が口のなかに張り出しているのがわかります。膿瘍の部分を針で刺して膿汁が吸引されれば診断できます。膿瘍部が穿刺できないこともありますので、CTや超音波検査を行って膿瘍の場所を確認することがあります。

③扁桃周囲膿瘍、扁桃周囲炎の治療について教えてください
扁桃周囲炎の場合は、抗生剤を主体とした点滴による保存療法がおこなわれます。しかし、扁桃周囲膿瘍では、保存的治療では改善しないことが多く、膿汁の排泄を目的にした治療が必要となります。膿汁の排泄には、膿瘍の場所や程度を考えて、注射針で穿刺吸引する場合と、メスで1~2cm程度を切開排膿する場合があります。切開後には、十分に排膿するためにガーゼドレーンを置く場合があります。

外科処置と一緒に、点滴注射により抗生剤を投与し、脱水の改善を図ります。習慣性扁桃炎では、年間4~5回以上、炎症を繰り返す場合に手術をお勧めしますが、扁桃周囲膿瘍を起こした場合は1~2回の炎症でも手術をお勧めする場合があります。睡眠時無呼吸症候群や病巣感染がある場合は早期に手術したほうがよいと考えられます。