IgA腎症(IgA nephropathy)について

①IgA腎症とはなんですか?
IgA腎症は学校検診の検尿で発見される腎炎やネフローゼ症候群のなかで最も多くみられ、小児における慢性糸球体腎炎の約半数を占めます。臨床症状はほとんどなく、学校検診の検尿で偶然に発見されることが多いのですが、ネフローゼ症候群や慢性腎不全として見つかることもあります。世界でもっとも頻度の高い原発性糸球体腎炎で、特に日本をはじめとするアジア諸国に多く発症します。男女比は2:1~6:1で、男性に優位に発症するとされています。
小児では小学校高学年に発症のピークがあり、6歳以下ではまれです。扁桃炎などの感染を契機に肉眼的血尿(コーラ色の尿)がみられることがありますが、このような肉眼的血尿の80%はIgA腎症が原因と言われます。
腎生検による病理組織で確定診断します。以前は小児期のうちに、10~15%が腎不全に移行しましたが、近年は副腎皮質ステロイド薬やACE阻害薬などを用いる治療の進歩により、小児期に腎不全に至る例はかなり減少しました。しかし、依然として小児期IgA腎症の50~80%は成人してからも症状が持続します。約30-40%は末期腎不全に至る予後不良の疾患であることがわかっています。

②IgA腎症の原因は何ですか?
大規模な家族内集積例が存在していることや一卵性双生児における発症例があることなどから、慢性糸球体腎炎のなかでIgA腎症は、最も疾患感受性遺伝子が想定されている疾患です。
IgA腎症の病因は主に腎臓そのものよりも腎臓外にあることが想定されています。これは、IgA腎症患者さんが末期腎不全になり移植を受けた際に、約半数の患者さんで移植腎にIgA腎症が再発することや、過去にたまたまIgA腎症の患者さんの腎臓を、他の疾患で腎不全になった患者さんに移植した際に、移植した腎臓のIgAの沈着が消えたとする報告などからそのように考えられています。腎臓外の病因として主にIgAの産生系に関わる異常が指摘されています。IgAは粘膜免疫に深く関わることから、細菌・ウイルス抗原や食物抗原などが数多く研究されてきましたが、いまだ抗原は特定されていません。しかし、IgA腎症の患者さんは上気道感染を契機に肉眼的血尿などの臨床像の増悪を認めることから、扁桃含む上気道粘膜の関与が想定されています。

③どのような治療法がありますか?
指針では分類された4つのリスク群に対して、生活指導、食事療法、薬物療法が提示されています。中等度以上のリスク群に対してはパルス療法を含む副腎皮質ステロイド療法の適応が積極的に考慮されています。しかし、低リスク群であっても糸球体に急性糸球体病変を有する場合にはステロイドの使用が考慮されます。逆に、超高リスク群では、硬化などの慢性病変の程度が強い場合にはステロイドの使用は慎重に行うことを指摘しています。
腎臓が悪いのに、なぜ離れたところにある扁桃腺を摘出するのか疑問に思われる方もいると思います。扁桃腺を含む口腔内感染によって、IgA腎症を起こす異常なIgAが産生されると考えられており、その原因を除去するために行います。また、ステロイドパルス療法はすでに血中に存在する異常IgAや腎臓に沈着しているIgAを抑えるとともに、糸球体で起きている炎症も抑制する効果があります。治療期間は約半年の間に、扁桃腺摘出術と合計3回のステロイドパルス療法を組み合わせて行います。