真珠腫性中耳炎( cholesteatoma)について
①真珠腫性中耳炎とはなんですか?
鼓膜の一部の角化した皮膚が、内部にDebris(デブリ)と呼ばれる剥離物を伴って中耳に侵入し、細菌感染などの炎症を起こしながら、骨など周囲の構造物を破壊して増大する病気です。発生する原因は未だ解明されていませんが、鼻と中耳の換気を行っている耳管の機能が悪いことや、中耳のガス交換を担当している乳突蜂巣の働きが悪いことなどが関係しているといわれています。真珠腫という名称は、見た目が白くて真珠に似ているところから名付けられました。腫瘍とは異なり、炎症性の腫瘤です。真珠腫には、生まれつき生じている先天性真珠腫と、出生後に生じた後天性真珠腫があります。さらに後天性真珠腫には、鼓膜上方の弛緩部から発生する弛緩部型真珠腫と、鼓膜緊張部の後上部から発生する緊張部型真珠腫があります。まれですが、鼓膜穿孔の縁から発生する二次性真珠腫があります。弛緩部型真珠腫が一番多いタイプです。
②どんな治療を行いますか?
真珠腫性中耳炎は骨を壊して進む病気です。初期ではあまり症状がないこともありますが、細菌感染がおこると、耳だれ(耳漏)が出たり、耳痛が出現する場合があります。真珠腫が進行して周囲の骨(耳小骨)が破壊されると難聴となります。さらに進行するとめまい、顔面神経麻痺、髄膜炎、内耳炎などが起こることがあります。真珠腫を放っておくと、いろいろな神経に障害を及ぼすために非常に危険です。真珠腫と診断された場合は、すぐに治療をしたほうが良いでしょう。治療は原則的に手術治療(鼓室形成術)が必要です。鼓膜の陥凹が浅く自浄作用が保たれている場合や陥凹部の清掃が可能な場合は、外来にて経過を観察する場合もあります。真珠腫は炎症性疾患ですが再発しやすく、再発の時期も様々です。そのため手術を行っても長期的な経過観察が必要となります。
③先天性真珠腫について教えてください
先天性真珠腫は真珠腫性中耳炎のうちの5%くらいといわれています。原因は胎内期に鼓膜の奥に真珠腫の原因となる細胞が残された為に発症すると言われます。発見されるまでわからない場合が多いです。先天性真珠腫にはクローズ型とオープン型があります。
乳幼児期に発見されるクローズ型(嚢胞型)は、正常な鼓膜のなかに白色塊が透けて見えたりして診断されます。耳あかを取る時や3歳健診の時に偶然発見されることが多く、それまで耳の症状はほとんどありません。まれに難聴、または急性中耳炎による耳の痛みで耳鼻咽喉科を受診して発見される場合もあります。これに対し、学童期から成人になって発見されることが多いオープン型(膜型)の場合は、難聴の原因の検査などをして見つかることが多いです。中耳よりも深部の乳突洞に発生するタイプでは、顔面神経麻痺などの症状で発見される場合もあります。
先天性真珠腫は幼児期に急性中耳炎や滲出性中耳炎を繰り返した場合に増悪しやすいと言われています。鼻をすすることが真珠腫を発生させる要因ともなります。鼻をすするクセのある人はより発症しやすいのでなるべくしないようにすることが大事です。また、風邪をこじらせると耳にも感染しやすくなり、真珠腫が悪化する場合があります。耳だれが出る、耳から血液が出る、聞こえにくくなる、耳が痛いという症状が出る事が多いです。このような場合はすぐに耳鼻咽喉科を受診することをお勧めいたします。